幻想機械 ~ Phantom Factory
夢違科学世紀 ~ Changeability of Strange Dream. より
結局、メリーは夢の世界の話をするだけして、一人で満足して帰って行った。
私はメリーから手渡された幾つかの品を見つつ、頭の中を整理していた。
メリーは夢と現は同じ物だと言っていたが、そんな筈がない。
例え昨今の相対性精神学の常識がそうだと言っても、
それはあくまでも精神の中での話であって、夢の中の物体が現実に現れてしまっては困る。
質量保存の法則が成り立たない。
エントロピーはどうなるのだろう。
私は確信していた。
メリーは気が付かないうちに、実際に結界の向こうに飛んでいる。
それを夢だと思いこんでいる。
今、結界の向こうに非常に近い市に居るのだろう。
まさかメリーが見える能力から操る能力に……なんて事は無いと思うけど。
最近、真面目にサークル活動し過ぎたかな。
このままでは、夢の中で妖怪に喰われてしまうかも知れない。
もしくは神隠しに遭うかも知れない。
メリーの想いが色んな世界に揺らいでいる。
別の世界に居るときに、本人が夢ではないと気が付いてしまえば、もうこっちの世界に戻れなくなるかもしれない。
こっちの世界を夢だと思いこんでしまうかもしれない。
本人は気が付いていないけど、非常に危うい状態にある。
私のカウンセリングとして考えられる手段は二つ。
これらの品を捨てて、完全に夢、幻だった思いこませる方法。
そうすれば二度と現実には夢の世界にいけなくなるだろう。
夢と現は別物なのだ。
もう一つの方法は……
夢ではなく、実際に別の世界にいる事を強く意識させて、夢から眼を覚まさせる方法。
そうすれば、夢の世界で訳も判らないうちに死んだりしない。
ただ……この世界に帰れなくなる可能性もある。
メリーにはどっちが良い?
私にとってはどちらが一般解?
……そんなの決まってるじゃない。